PARCO_yaができるまで

パルコヤができるまで―
集う人が愛着を持てる場所へ

―《パルコヤ》。クラシックな響きの中に新しさを感じるこの名前は、気鋭のコピーライター小藥元さんによるものです。そしてそこに命を吹き込み、上野の歴史と《パルコ》のポップさが見事に融合したロゴを手がけたのはアートディレクターの千原徹也さん。アイデアとユニークなクリエイションを武器に、第一線で活躍するお二人に、今回のネームとロゴができるまでを伺います。

千原徹也(以下、千原) 最初は小藥さんが、いくつか名前の案を持ってきてくれたんです。その中で小藥さんとしては絶対に《パルコヤ》にしたいと。実際見てみたら僕もこれがダントツにいいって同意したんです。

小藥元(以下、小藥) 今までの《パルコ》とちょっと違う印象を持ちつつも、長く愛される強いネーミングをつくりたいという思いがありました。「屋」という言葉には、土地柄を感じる老舗感とプロフェッショナルという意味があるように思います。例えば、のりの専門店だったら「のり屋」ですよね。《パルコヤ》は特に大人に楽しんでもらいたいお店だからこそ、「パルコを極める」ではないですが質の高いサービスを印象づけるような言葉を選んだんです。「屋」を「ya」にしたのにも意味があって、「yet another」つまり“さらにもうひとつの”という意味の略語になっています。千原さんには、あともう一息命を吹き込んでもらいたくて、バトンをお渡ししたという感じです。

千原 若者文化を牽引してきた《パルコ》も、「屋」とつくと老舗の世界観になる。その感じが僕もすごく気に入って。それで古い家紋の資料を見たり、上野の昔ながらのお店のロゴを参考にデザインしていきました。

小藥 クラシカルさと新しさをうまくくっつけることができましたよね。大人の《パルコ》というコンセプトは大切にしながら、やっぱり若者たちとのハブとなって、その2つが交わることのできる「器」のような大きさも意識しました。

千原 家紋のような赤い部分、実はカタカナの「パ」になっているんです。ただの老舗ということではなくて、遊び心があったほうが《パルコ》らしいと思って。パッと見は老舗、よく見ると軽やかな「パ」というバランスがいいかなと。朱肉でポンっとハンコを押した雰囲気を出したくて、このカラーにしました。

小藥 千原さんとなら言葉だけでは浮かばなかった景色が見られると思っていました。実際「伝統の重さ」と「新しさ」を汲み取ったデザインに仕上げていただいて。新しいクラシカルさが表現されていると思います。

千原 その土地の文化を紐付けてデザインしていくことは大切だけど、それだけでは普通のものになってしまうんです。そこで、例えばたまたま通りすがった女の子のキーホルダーとか、まったく関係ないようなかわいい要素を足してあげる。どう混ぜるか、ということをいつも意識していますね。

小藥 昔は《パルコ》に通っていたけれど……という大人の方にも新鮮に感じてもらいたい。やっぱり行きたくさせるっていうことがすべてだと思うんですよね。ニュースやリリースという「情報」を超えて、このお店なんだろう? と思って調べたり、行ってみたいと思ってもらえたら嬉しいです。

千原 《パルコヤ》という言葉はどんどん世間になじんで、誰が考えたとかそういうレベルじゃなくなっていくものになると思います。このロゴのグラフィックデザインもいいねって言ってくれる人が増えて、ずっと残ってくれたらいいな。

小藥 基本的にいい名前って広がっていくんですよね。企画が広がっていく。例えば《パルコヤ》という名前の中に「小屋」という言葉が入っているので、クリエイティブを提供していく場所にもなっていくのかなと想像が膨らんだり。ほら、「たまや〜」とか「よっ、パルコヤ!」みたいな音も聞こえてきませんか?

千原 名前が一人歩きしていくっていうことだね。

小藥 そうなるとより一層愛着が持てるかなと思うんです。

  • 小藥 元さん

    meet&meetコピーライター。
    SUNTORY、TOYOTAキャンペーンのコピーライティングなどを手がける。

  • 千原 徹也さん

    (株)れもんらいふ代表。
    主な作品にadidasoriginalstokyo、 NHK「ガッテン!」などがある。

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